気持ちを出す事
10月後半、年少のG君は「行きたくない、帰りたい」と登園を戸惑うようになりました。その姿に新しい生活に慣れてきた頃と思いがちですが、G君にとってはきっと日々の生活が新しい事の連続なのでは?と感じました。「はさみをして、おにぎり食べたら帰ろうね」と話しながら手を差し出すと、泣きながらもそっと手を伸ばします。
大好きなお母さんと一緒にいたい、新しい事への戸惑いを我慢せずに泣きながら表現する姿を大切に受け止めたいと思い、制作の小さな机を用意し一緒にゆっくりと過ごす事にしました。G君は泣きながらもそこに座り込み箱を選びテープでくっつけ始めるのです。何か話しかけようとすると「やだ!帰りたい…」と涙ぐみますが、一緒の空間や雰囲気、時間を共にしながら、友達や先生とそっと一緒に過ごしていると「これくっつけたいから持ってて、これ凄いよね。」と話し始めました。
翌日、やはりG君は涙での登園です。しかし、その手には箱の入った袋が握られていました。「帰りたい・・・」と言いながらも門で保育者の手を握り歩き出し、テラスに広がる机を友達と囲みすぐに作り始め、「はさみして、おにぎり食べて、Y先生と遊んだら帰るんだ!」と呟きます。「Y先生の事、好きなの?」と聞くと「昨日おにぎりの後遊んだ。一緒に走った!今日も一緒に走るんだ」と教えてくれました。
その言葉は、Y先生との時間や空間、遊びを楽しみ、自分が受け止められているという安心に繋がっている様でした。
幼稚園生活を考える時みんなと一緒の活動を行う事を考えがちですが、その根底には一緒に生活を行う保育者や友達に関心を持ち、自分のその時の素直な気持ちを出せる事から始まります。そしてその気持ちを受け止められている事が安心感に繋がってゆくのです。