笑顔に変わる瞬間
新しいクラスに戸惑い、毎朝不安な表情で登園する年少A君。教師と手を繋いで門に入ると、「ママ〜〜!!」と全力でお母さんを呼び止めます。お母さんの姿が見えなくなると、「もうここから絶対動かない」と門の前でしゃがみ込んで頑なに動きません。そこへ、同じクラスの年少B君が登園し、「あれ、A君そんなところでどうしたの?」と尋ねます。A君は答えませんでしたが、B君が「ぼくも!」となぜだかA君の隣に座ります。保育者はその姿に驚きながらも、温かさを感じました。3人で一緒に座り、B君の家族の話を聞いていると、Aくんもポツポツ話始めます。話しているうちに、自然と笑顔になっていったA君。友達に寄り添ってもらったことが嬉しかったようです。
次の日も不安な表情のA君。この日は、涙を堪えて、自転車置き場が見える柵にへばりつき、お母さんを見送りしました。暫く外を見つめ、「行っちゃったね」と言いながらも、保育者としっかり手を繋ぎ、クラスまで来ることが出来ました。
次の日は、お母さんと見つけたダンゴムシを手に登園しました。教師が「ダンゴムシのおうち作ってあげようか」と誘うと、お母さんに気持ちよく手を振って晴れやかな表情で門から入ります。「足何本?動きすぎて数えられない」「Aの指の先っぽが好きみたい」と観察していると、「このダンゴムシの家族は幼稚園にいるかも」と園庭に駆け出すAくんの姿は輝いて見えました。
大人が無理に涙を止めようとせずとも、気持ちに寄り添うことにより自然と笑顔になり、動き出すA君の変化を近くで感じられた嬉しい出来事でした。